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有生子のエッセイ

デンマーク旅行記 5

2020/10/7(水)
Day(Dag)5 & 6 @København, Tokyo
2017年8月24&25日(木曜&金曜日)

最終日は、先月末青山店が閉店した
『アンデルセン』のコペンハーゲン店に立ち寄りました。
小さな店構えながら、
地元のお客さんがひっきりなしに行き交う、
素敵なパン屋さん。
品揃えはデンマーク仕様で、
日本にはないものがほとんどです。
アンデルセン名物のデニッシュ(こちらではデニッシュとは言わず、
ウィーンのパンと呼ぶ甘いパン)を、
たくさん買ってしまいました。
カフェでは、ルバーブのタルトを美味しく頂いて。
帰り道の、運河を見下ろす橋の上。
朝から元気にスタスタ歩く夫の後ろ姿を追いながら、
始まりはどうなることかと不安だったこの旅も
もう終わりだな、
あと数時間で機上の人になるんだな、
と思うとせつなくなりました。

飛行機では、
日本で観られないデンマーク映画はきっちり観て(笑)、
日付を跨いだ東京に降り立つと、、、暑い(汗)
自宅に帰るとさっそく、冷たい素麺を。
また、ありふれた日常が始まります。
でも、これまでとはきっと違う日常です。

※アンデルセンのコペンハーゲン店は、チボリの横にあったはず、
と思いつつ、グーグルマップで探してやっと辿り着きました。
日本に帰ってから知ったのですが、
この日の一週間前に移転新装オープンしたばかり!だったそうです。

デンマーク旅行記 4

2020/10/7(水)
Day(Dag)4 @Nyhawn og Strøget @Helsingør
2017年8月23日(水曜日)

一篇の戯曲のようだった一日。

【第一幕】
物語は「これぞデンマーク!」という、
世界的に知られた運河沿いの街並み『ニューハウン』
から始まります。
爽やかな朝の光を浴びながら、
カフェで1日の予定をなんとなく話し合った私たち夫婦は、
とりあえずお土産を買いに行くことに。
コペンハーゲンの目抜通り『ストロイエ』に足を伸ばします。
クッキーやキャラメルや、老舗の紅茶を大量に買い込み、
ロイヤルコペンハーゲンのカフェでランチを。
そこで、デンマークと日本の食文化を組み合わせた
「スムシ(SMUSHI)」に出会います。
いわば寿司のようなオープンサンドイッチ。
smørrebrød+sushi=SMUSHI
【第二幕】
あまりに歩き疲れたので、ホテルに戻り、
ほんのすこし休むはずが眠ってしまい、
はっと目を覚ましたら夕方近くに!
予定していたクロンボー城へ行くにはギリギリの時間。
変更して近くを散策するか迷いながら駅へ。
運良く、5分後に出発する電車を見つけます。
なんとか城の閉館時間までには間に合いそうです。
【第三幕】
コペンハーゲンから北へ45キロの距離にある『ヘルシンオア』。
駅の改札を抜けると海沿いに聳え立つ古城がすぐそこに現れます。
シェイクスピア「ハムレット」の舞台、クロンボー城です。
間に合ってよかったと胸を撫で下ろしながら入り口に向かうと、
一枚のポスターが。
何と今夜は日本の能のパフォーマンスがあるとのこと!
偶然にも夫の故郷、熊本ゆかりの能楽師らしい。
これは観ていかなければ。
【第四幕】
城めぐりを終えた後もヘルシンオアに留まり、
新作能というハムレットをモチーフにした「オフィーリア」を観賞。
デンマークと日本が国交を始めて150年。
記念行事のひとつだったようです。
まさかこの地で能を観るとは、、、
想定外の1日の終わりに、感慨深い二人でした。(終わり)
【エピローグ】
今回の旅で、私たち夫婦の個人ガイドを務めて下さった
「レイコ先生」に観客席で遭遇!
通訳の第一人者として、デンマーク人のご主人とともに
最前列に招待されていらっしゃいました(お仕事だったのかも)。

デンマーク旅行記 3

2020/10/7(水)
Day(Dag)3 @Odense 
2017年8月22日(火曜日)

「人生は旅だ!」

コペンハーゲンから海を渡り、
電車で一時間半。
シルクハットと小さなトランクで世界を旅した
アンデルセンの生誕地、オーデンセへ。
童話の風景そのままの
可愛らしい街並みのなかで、
貧しい子ども時代を過ごしたアンデルセンの家は、
薄暗くひんやりとした、狭い一間。
14歳でこの部屋を飛び出した彼の、
はちきれんばかりの心を想いました。

今年10月いっぱいで閉館(新しく建て替えるのだそう)
という博物館では、切り絵が得意で、
お世話になった家の人々にプレゼントしていた
という作品がとても素敵だったので、
そのなかの気に入ったひとつ(もちろんレプリカです)
をお土産に。
中庭で行われていた寸劇を観賞して、
日帰りの旅は終了。
夕食は、コペンハーゲン中央駅近くで、
ガイドの「先生」(デンマーク在住45年のレイコさん。
時々ビシッと叱られつつ、昨日今日と講義のような
的確なガイドをして下さったので、私たち夫婦は「先生」
とお呼びしておりました)、お勧めの中華料理を。
初日から歩き通しで、疲れきっていた身体に、
再び活力を与えてくれました!

さあ、人生の旅は続きます!
(↑オーデンセ駅前の信号。アンデルセンのシルエット)

デンマーク旅行記 2

2020/10/7(水)
DAY(Dag)2 @Copenhagen 
2017年8月21日(月曜日)

憧れのデンマーク。

この旅を実現しようと心に決めたのは、
2017年の「今」だからです。
この国が日本と国交を始めて150年の今年。
1967年生まれのわたしも、50歳。
人生の節目を迎え、
これまでを振り返りこれからを夢想するなら、
考えるより先に動かなければと此処へ来ました。

そんな「今」を全身で感じた「今日」です。

よく晴れた、澄んだ空の下。
運河からこの街を眺め、
宮殿の特別展示に歴史を学び、
自転車で行き交う大勢の人々のスピードに驚いたり、
酪農の国ならではのソフトクリームやチーズ、
世界一と謳われるコーヒーや、
とにかく美味しすぎるオープンサンドイッチ
(smørrebrød/スモーブロー)に感動したり。
印象的だったのは、
キェルケゴールの銅像に隠れるようにして
こちらを見ていた、小さな女の子でした。

デンマーク旅行記 1

2020/10/7(水)
2017年の夏。50歳を迎える年に初めて訪れたデンマーク。
下記は、その6日間を記した日記です。
DAY(Dag) 1 @Copenhagen 
2017年8月20日(日曜日)

デンマークの夜は明るく、
日が落ちるのは21時を過ぎたあたり。
気温は13度くらいで予想以上に肌寒く、
体調を崩した夫と
長袖の服をできるだけ重ね着をして、
初めてコペンハーゲンの街を散策しました。
ホテル近くでステーキをもりもり食べたら
なんとか復活した夫にほっとしつつ、
きらきらしたチボリ(古くからある遊園地)の前を通り、
かねてから大ファン❤
イヤマちゃんのキャラクターが可愛いスーパー
『Irma』へ。
この国の国民が愛してやまないお菓子
(だけれども、ひどく不味い)という
ラクリス(LAKRIDS)をさっそく購入。
うん、、たしかに漢方な味で美味しくはないです(笑)
でもすごく食べてみたかったので大満足!

☆機内で大好きな俳優ニコライ・リー・カース主演の
おそらく日本では公開しない)デンマーク映画も観られて
こちらも大満足!
追伸。初めて話してみたデンマーク語が
お店の人に通じて嬉しかった。
Må jeg bede om regningen?
「お勘定お願いします」

なぜデンマーク?

2020/10/7(水)
「デンマークが好きなんです」
そう口に出すと決まって、「なんで?」「どうしてデンマーク?」
と訊かれます。

「誰かを好きになったときと同じように、
好きなことに理由なんてない」
と答えたいのだけれど、説得力がなく、
納得してもらえません(笑)

だから、「出会った瞬間から恋に落ちた」
その出会いを話すようにしています。

今から8年前の、2012年。
ドラマ「キリング」(CS『スーパー!ドラマチャンネル』放送)の
シーズン1と2、このふたつを続けて観たこと。
これが、最初の出会いです。

当時、日本のドラマづくりに疑問と閉塞感を感じ、
母の介護をきっかけに、脚本を書くことから離れ始めていた頃でした。
そんなわたしに、海外では、とくにデンマークでは「理想のドラマが存在するんだ」という、
羨望と衝撃を与えたのです。

子供の頃から海外ドラマに興味があり
BBCのホームズやポワロは大好きでしたし、
アメリカのハリウッド系のものはもちろん、
韓国ドラマも台湾や中国ドラマも、
ジャンルを問わず、国を問わず、
かなりたくさんのドラマを観てきた、という自負はあります。

それまで観たどのドラマよりも、どの作品よりも、
わたしが求めているもの、
憧れているもの、
書きたいもの、書きたくても書けないもの、
すべてを内包し、具体的に提示し、
さらにその先の世界を驚きを持ってみせてくれる――――
それが『キリング』でした。

こんな素晴らしい作品を生むデンマークという国は
いったいどんな国なんだろう?
たまたまこのドラマが素晴らしいだけ?
この制作スタッフが優秀なだけ?
デンマークに限らず、ほかの北欧のドラマは?

折しも、スウェーデンの「ドラゴンタトゥーの女」が
ドラマ・映画ともに日本で人気を得て、
北欧ミステリーブームが沸き起こっていた頃でした。
「知りたい」気持ちが募ったわたしは、この機会に乗じて、
とにかく北欧のドラマはなんでも手あたり次第、観るようになりました。

スウェーデン「ドラゴンタトゥーの女」
      「刑事ヴァランダ―(BBCと共同)」「凍てつく楽園」
      「エリカ&パトリック事件簿」
      「犯罪心理分析官インゲル・ヴィーク」
スウェーデン・デンマーク合作「ブリッジ」
デンマーク「ゾウズ・フー・キル」「コペンハーゲン」「リタ」「ザ・レイン」
ノルウェー「私立探偵ヴァルグ」「ジャーナリスト事件簿~匿名の影」
フィンランド「刑事ソフィア・カルピ」「ボーダータウン・犯罪が眠る街」

などなど、いま思いつくものをざっと書きだしたので、
ごく最近のものもあります。
※「コペンハーゲン」(シーズン3)「リタ」(シーズン5)「ザ・レイン」(シーズン3)は現在、
Netflixで全シーズンが観られます。

どれも素晴らしかったのですが、
「キリング」のときと同じほど唸ったのは、
「ブリッジ」と「コペンハーゲン」です。
※政治ドラマ「コペンハーゲン/原題:BORGEN(国会議事堂)」は、久々にシーズン4が制作中らしい。
これも本当に素晴らしい!

かなり早い時期に、わたしにはやはり、
デンマークのドラマがもっとも響くということがわかりました。
以降はドラマから映画、小説へと興味は広がり、
アンデルセンの童話やキェルケゴールの哲学、
そして、国民の幸福度が高い「デンマーク」という国、
そのものを知りたくなっていったのです。

好きな人を、もっと知りたくなる。
ただそれだけのことが、ずっと続いているだけなのかもしれません。

いつかこの熱も冷めるかもしれません。
微熱になるかもしれないし、冷めないかもしれません。

今は、大好きなデンマークについて、
思うこと、感じること、
知りたいことや伝えたいことを、できるだけここに、
書き留めていこうと思っています。
気負わずに。世間話のように。

ゆるゆると書いていきますので、
たまにお付き合い頂ければ、幸いです。

追伸。
わたしの「デンマーク好き」を決定的なものにした映画があります。
2014年から、デンマーク語を習い始めているのですが、
最初の授業のときに、先生に教えて頂いたスサンネ・ビア監督の「しあわせな孤独」です。
作品の詳細については、「キリング」も含め、
次回からゆっくりお話していきます。

なにも情報のない、まっさらな気持ちで観たら、
きっとあなたの心になにか落としてくれる、そんな映画です。
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